天命

今日はオレの誕生日。正真正銘、満五十歳。

低空飛行のオレの人生が半世紀続いたとは！我ながら驚いている。

五十にして天命を知る と言うが、オレの天命、運命はまだわからんね。

しかし最近一つわかったことがある。
あの有名なスピルバーグ監督が、学習障害だとカミングアウトされたニュースを見た時だ。

う！これってまさにオレのことじゃん。

なるほどオレの人生が低空飛行だった理由がわかったよ。

思えば子供のころ学校の成績は、すこぶる悪かった。
成績が上がらず多動性のあったオレに母親は苛立っていた。
オレも言語能力が劣っていたせいで、気持ちを上手く伝えられず「お袋はオレを理解してくれない」と不満をつのらせていた。不仲になるのは当たり前だな。

なんとか高校には進学したがすぐ中退して、逃げるように親元から離れたっけ。

一人になってホッとはしたものの、仕事も長続きせず職を転々としていたし、このままで良いのかと悩んでいたな。
二十代、三十代のころは、いつも曇り空の下にいる気分だった。

四十を過ぎて、「今さらオレには何も成し得ないな。ならば生活のため必要最小限に働き、余った時間を遊んで過ごそう。」そう考えられるようになって気が楽になった。

そして今、自分の障害のことがわかって合点がいった。

スピルバーグ監督は幸運にも、障害を補っても余りある才能お持ちになっていたので、素晴らしい人生を送られていることと思う。

オレにも彼の様な才能があったらなぁ。
いや、待てよ！オレにもあるぞ、貧乏の才能が！

一年中水シャワーを浴びてガスの契約しないやつなんか日本中どこにもいないだろ。
しかも我慢どころか、もっと貧乏したがっているんだぜ！

こりゃ誰にも真似できない、やっぱオレは貧乏の天才だったんだ。これがオレの天命。

そんな天才なりたくないって？
そうかなぁ、楽しいのに。

あ、ちと長くなってすまんね。誕生日だからお許しを。

こっちにもお運びを。あまのに突っこみ！
あまの演芸ホール


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